幻想ミステリ博物館 館長BLOG 読書編

HP「幻想ミステリ博物館」の「館長日記」のうち、読書に関する話題を特化して、BLOGに移行しました。

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P・D・ジェイムズ氏逝去

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 推理文壇最長老のP・D・ジェイムズ氏が、11月27日英国オックスフォードで亡くなりました。94歳でした。2011年の『高慢と偏見、そして殺人』が最後の長編です。氏の看板シリーズ、ダルグリッシュ警部の最終作は、2008年の『秘密』です。90歳を超えても意欲的なミステリを発表されて、昨年まではインタビューにも応じていられたり、お達者でいるとばかり思っていましたが、訃報を聞くこととなりました。
 ずっとリアルタイムで新作を追って来た作家の訃報をお伝えすることばかり多い昨今ですが、ジェイムズ作品は常に身近に置いて紐解いてきた、私にとって英国小説の規範のようなものでしたので、20冊の長編を静かに読み返して、作者を偲びたいと思います。幸い手許に取り出し易い場所に全作品が揃っていました。
 ジェイムズ作品で私が好きな点は、英国の「建物」という無機物が、登場人物にもまして存在感を発揮していたという一点に尽きます。建物が人間臭いのです。犯罪のディテールは血腥く陰湿なものが多いのですが、それを補って余りあるのが建物の魅力でした。地霊・家霊のようなものが建物に宿り、人間の引き起こす悲喜劇を黙って見守っているかのような安定感が、いつも底流にあります。英国人の古い建物好きの真髄に迫る、いわばゴシック趣味の権化のような作家ですね。遺作となった作品も、ジェーン・オースティンの古典名作の後日譚という意表を突くものでした。「館が主人公」と言われる英国ゴシックの伝統の、最高にして最後の作家でした。
 彼女の作品ではとかく、『女には向かない職業』『皮膚の下の頭蓋骨』の、可憐な女探偵コーデリア・グレイものが推奨されることが多いのですが(現に文庫で入手可能なのはこの二冊)、これらはあくまで本流のダルグリッシュものの外伝であり、処女作『女の顔を覆え』から最終作『秘密』まで半世紀近く主役を張ったアダム・ダルグリッシュの浩瀚なるシリーズが、復刊され再び読まれんことを期待するのですが、代表作『ナイチンゲールの屍衣』『黒い塔』『死の味』『策謀と欲望』はみな絶版。あれれ?早川書房さん頑張って下さいよ。
 ダルグリッシュは詩集を出版するポエットでありながら、スコットランドヤードの警視長まで昇りつめたキャリアの持ち主という、異色の警官です。繊細にして慇懃な彼の魅力をもっと読者に知ってもらいたいと思います。
 新刊が陸続と出ていた頃、ジェイムズ作品はとかく、「重くて読み辛い」との評判が独り歩きしていましたが、オースティンを読むかのようにロマンチックな面にも留意して読んでいただくと、案外すらすら読めるのではないかなと思ったりもします。ダルグリッシュもコーデリアもいいけれど、建物も人格を持っています。その辺りに注目してみてはいかがでしょうか。
 最後になりましたが、Rest in Peace, P.D.James.
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  1. 2014/12/01(月) 09:54:47|
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