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今年もあまりたくさん読めなかったです。というか、読みたくなくなった、というのが正直なところ。敬愛する作家がここ数年で亡くなってしまい、キャリアが長くて本来の分野で活躍されているのは、皆川博子先生ひとりです。
その皆川先生の本が、再刊を含め、9冊も出たというのは驚きです。文庫化を入れるともっとたくさん。凄いです。毎年「このミス」や「本ミス」のアンケートで気弱なことを仰っていますが、どうしてどうして、お元気そのもの。来年も出版芸術社のコレクション続巻が出る予定です。
さて、今年のベスト3をば。
国内編は次の通り。
1位『かがやく月の宮』宇月原晴明、新潮社
2位『影を買う店』皆川博子、河出書房新社
3位『黒富士』柄澤齊、新潮社
皆川先生の短編集は、今まで井上雅彦氏の「異形コレクション」をはじめとする各社のアンソロジーに書き下ろされてきたものを中心に、短い近作をまとめたもので、タイポグラフィを大胆に組み込んだ掌編など、単行本化できるのか?と危ぶんでいた作品が奇跡的に収録されていて、感涙しきりです。
本業が木版画家の柄澤氏の久しぶりの長編は、世界遺産に登録されたばかりのアレを呪詛するが如き怪作。陳腐な物言いですが、やはり絵描きの小説ですね。
そして宇月原氏のこれまた久々の長編ですが、ジブリの新作とネタかぶり???? いえいえ、こちらも2011年6月刊行の新潮文庫のアンソロジー『Fantasy Seller』に「赫夜島(かぐやしま)」を寄せた頃から、構想を温めてきた作品と思われます。
古典の『竹取物語』の本文を書き換えながら、驚くべき奇想を盛り込む、宇月原氏のお得意のパスティーシュ作品ですが、結果的にジブリとは真逆の方向の傑作になっています。かぐや姫も竹取翁も胡散臭いこと夥しい上に、平安初期の東アジア情勢を睨んだ欲張りな作品。昨今の本邦を取り巻く国際情勢を彷彿とさせるアクチュアリティも備えています。
宇月原氏は前作『安徳天皇漂海記』もその前の戦国三部作の時もそうでしたが、紛う方なき本邦の歴史を語っているのにアジア・ヨーロッパを視座に含め、海外幻想文学の美味な部分をこっそりと取り入れた、現代にしか許されない幻想文学を目指しているようです。
今年は皆川先生の新刊以外は正直読みたい本が少なくて、ベスト企画もムリかも…と思っていましたが、いずれも劣らぬ三作が年末近くになって立て続けに出まして、何よりです。
池上永一氏の『黙示録』や皆川先生の『海賊女王』といった大作を読み残して晦日になってしまったことが、心残りです。
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- 2013/12/30(月) 09:50:17|
- 国内ミステリ
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