幻想ミステリ博物館 館長BLOG 読書編

HP「幻想ミステリ博物館」の「館長日記」のうち、読書に関する話題を特化して、BLOGに移行しました。

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ヒーローの消し方

 『ヒーローの作り方』(早川書房)を読んだ。オットー・ペンズラーが旧知の作家たちに依頼して書いてもらった、自作キャラクターについての限定本をまとめたものだ。
 御大ロバート・B・パーカー始め、ランキン、ディーヴァー、コナリー、ハンター、マレルなど、英国パズラーファンには余り訴える所の少ない面子だが、なんとコリン・デクスターが参加している。それだけアチラでは今でも、モース警部の人気が高いのだろう。一時はドラマのおかげで、ホームズの人気をも上回っていたらしいしね。
 そのドラマも見たことないし、そもそも日本では『ウッドストック』『キドリントン』以外は全部絶版になっているので、これから人気が再燃するはずもないが、私は今でもデクスターの作風もモース警部も大好きである。ドラマは全作収録DVD-BOXでも出れば買うだろう。
 この『作り方』を書店で手にした時、デクスターの部分だけチラ見して、インタビュー集かと勘違いしたが、他の作家はけっこうマトモに短編仕立てで自分の探偵役に就いて語っているが、デクスターは架空インタビューだった。こないだミステリマガジンでルイス警部(おお!出世したのう)を主人公にした短編を読んだばかりだが、さすがに死んだモース警部は生き返らせるつもりはないのだろう。
 架空インタビューとは言え、おそらくファンに今までさんざん訊かれてきた設問ばかり、中には「なぜモースを殺して終わりにしたのですか?」なんて、耳に痛い質問もある。デクスターの答えが揮っている。「殺してはいない。彼は自然死したのだ」。そりゃそーだろー。長年の飲酒とヘビースモーキングがもとでの心臓病だもんな。
 ライヘンバッハの滝壷からホームズを引っ張り出したようには、モースを蘇らせるのは無理なのだが、色んなシリーズ探偵の終わり方について、しばらく思いを巡らせることになった。
 デクスターと同じ終わらせ方と言えば、ゲイ探偵デイヴ・ブランドステッターだろう。作者ジョゼフ・ハンセンは、これまたデクスターと同じように、数作前から健康上の不安という伏線を張って、デイヴを最後の一文で奈落に落とした。病死は殺人ではないのだよ、モナミ。
 ポアロはクリスティーに殺された。いや、犯人は別にいるのだが、クリスティー自身がポアロをうざったく思っていて、自分の寿命が切れる遥か以前にポアロ殺しの長編を書いておき、銀行の金庫に入れていた。
 ほとんどの探偵は、決して最後に死に花を咲かせない。ただ作者の一生とともに退場するだけだ。ハードボイルドならばさぞ、壮絶な散り際を曝すもんだろうと思いきや、メデタシメデタシで終わるのが多いのも意外だ。スティーヴン・グリーンリーフの誠実な探偵ジョン・タナーは長年の秘書とゴールインした。ローレンス・ブロックのネクラ探偵マット・スカダーも近作(おそらく最終作と言われている)ではシヤワセそうだし、フィリップ・マーロウでさえ、最終作(未完のほう)ではアレだ。何を勘違いしたんだか(笑)。
 永遠に生き続けるヒーローと、作者にとどめを刺されるヒーロー。明暗がくっきりと分かれてしまった。私は幻ミスのほうではあまり、常連探偵を書く作家は扱っていないが、名探偵が大好きだ。ホームズ・ルパン・アケチコゴローで育っているので、シリーズ探偵ものだとジャンルの如何を問わず、嬉しくなって愛読してしまう。そんな可憐な(自分で言うか?)ファンを、たまに奈落のどん底に突き落とす作家もいるのだ。作家稼業は罪つくりだねえ。
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  1. 2011/01/21(金) 10:05:02|
  2. 英国
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