幻想ミステリ博物館 館長BLOG 読書編

HP「幻想ミステリ博物館」の「館長日記」のうち、読書に関する話題を特化して、BLOGに移行しました。

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狄判事シリーズ個人訳完成

 ロバート・ファン・ヒューリック描く、ディー(狄)判事シリーズの個人訳が、ついに完結した。ハヤカワポケミスで10年前から進んでいた一大プロジェクト(?)である。訳者の和邇桃子氏もこれで、肩の荷がおりたことだろう。
 早川書房が手をつける以前は、ちくま文庫や三省堂、中公文庫で一部が紹介されていたが、まさか全作品翻訳されるとは…。非常に喜ばしい。奇しくも今年は、作者ヒューリックの生誕百年だし、ディー判事シリーズの第1作『沙蘭の迷路(中国迷路殺人事件)』の発表からちょうど60年と、因縁を感じる。
 ポケミスが昨年リニューアルして、最後の一冊だけ若干装いが変わった憾みは否めないが、ともかく、今月発売の中編集『寅申の刻』で16冊全部が日本語で読めることになった。スバラシイ。
 オランダの外交官だったヒューリックは、大使として日本に滞在していた折、江戸川乱歩らの知己を得て、ミステリ作家としての才能を開花させたのだが、中国の唐の時代に実在したディー判事の「公案」をヒントにシリーズを産み出した。ポケミスには珍しい挿絵も、作者本人の味のあるものがふんだんに載っていて、『紅楼夢』『金瓶梅』的な、そこはかとないエロスもある。
 「1300年前の名探偵」の誕生は、ヒューリックの東洋への限りない愛情と博識があってこそで、それが日本で生まれたということも、とても感慨深い。欧米で評判を得るより先に、日本で刊行されたのだから。
 こういうシリーズは、我々ミステリ愛好者の宝である。ポケミスは息が長いので、しばらくは品切れることもないだろうし、このままディー判事がフィクションの世界に産声を上げた日本で、末永く生き続けていってほしいと思う。今の警察小説に通ずるモジュラー型捜査小説のはしりのひとつでもあるし、これからの読者にも楽しんでいただきたい。読み継がれてこその、本の命である。
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  1. 2011/02/04(金) 23:08:43|
  2. 海外ミステリ
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